【初心者向け】発表スライドを伝わりやすくキレイにする方法

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本記事は、「ゼロから美しいスライドを作る!」というよりも、すでに完成した手持ちの「な~んか読みにくいスライド」を少し整理することで、劇的に伝わりやすくい綺麗なスライドを作る、ということを目的としています。
(もちろん、この記事で指摘される点を守ってスライドを作り始めても、それなりのものができますが。)

「発表スライドを作ってみたはいいけれど、上司や指導者、聴衆の反応がイマイチ……」という方々の悩みを解決します。

デザインはセンスではなく理論です。
ほんの小さな手間の積み重ねで、綺麗なデザインのスライドは簡単に作れます。

本記事で挙げられている項目は、プレゼン慣れしている人からすればごく当たり前の内容ばかりです。
しかしそんな「常識」なだけに、初心者は誰からも教わることがなくオリジナルでスライドを作ります。
そして見づらいスライドを作った結果、発表時に上手くプレゼン内容が伝わらず、苦労している発表者も多いのが現状です。
そんなスライドデザインの世界の「常識」を具体的に説明し、お手持ちのスライドのどこを直したらいいのかまで、ひとつひとつ解説していきます。

本記事は、

  • 発表用のスライドを作ってみたけどなんか読みにくい
  • 自作のスライドを見た上司や指導者、聴衆の反応がイマイチ
  • 垢抜けないスライドを改善したい
  • 発表の指導者だけど、渡されたスライドを見て「これをイチから修正するのか~!」と脱力した

そんな方たちのための記事になっています。
プレゼンをされる初心者の方であれば、読んで損のない内容だと思います。
またプレゼンの指導をする方であれば、直接指導をする前にこの記事を見せれば、指摘すべき点がだいぶ減ると思います。

プレゼン初心者の方は、まずはご自身のスライドを開きながら、以下の点を一つずつ修正していきましょう。

目次

最初のスライド全体の修正

一言でいうと、人間は揃っているものを見ると「美しい」「センスがいい」「正しい」と感じます。
(さらに言えば、色が少なく余白が大きいものほど高級で大人っぽく感じ、色が多くたくさんのもの描いてあるものほどポップで子供っぽく感じます。)

それは発表スライドでも、書籍やサイト、ブログでも、インテリアやファッションでも共通です。
発表スライドにおける揃っているべきものとは、文字のサイズや書式、色、文字や画像の位置……などなどです。

より正確に言えば「人は揃っているものが好き」というよりも、人類は長い歴史のなかで、些細な違和感を瞬時に見つけて敵を見極めることで生き抜いてきたため、「ほんのちょっとのズレや違和感に異様に敏感」なのです。
我々が自分の地元の方言を真似する人の喋り方に、妙に強い違和感を覚えるのもその一端です。
人間という社会的動物は、余所者を見つけ排除することで、自分たちの心許せるコミュニティを守ってきたのです。
(あまり嬉しい習性ではないですが、人類が長い進化の過程で培ってきたものなので、簡単にはなくなりません……)


そんなわけで、聴衆の懐に入り込み、きちんと「発表の内容を聞いてもらう」ため、これから述べる各チェックポイントを確認して、スライドを「綺麗に揃ったもの」にしていきましょう。

フォントを揃える

同じカテゴリーレベル(次元)での文字のフォント、つまり書体とサイズはきっちり揃えましょう
色に関しては、特別に強調したい、または比較を示したいところ以外はすべて揃えます
概念の次元(=抽象度)のイメージがわかない場合は、下記の記事のこのあたりにまとめていますので読んでみてください。

胸を張って必要と言える理由なしに、「全角と半角を混ぜる」とか、「文章の途中で文字のサイズやフォント、文字色が混ざる」なんていうのは言語道断です。
正直、文字の書式やサイズがバラバラのスライドは、それだけで聴衆の読む気を削ぎます。
プレゼンの内容に集中させるため、内容と関係のない情報は極力減らすのが吉です。

フォントを揃えた方が圧倒的にオシャレにも見えます。
文字の色も基本的には揃えます。強調のために色を使う場合も、1色か2色程度にしておくのが無難です。
服装でも、「色は3色までに抑える(うち2色はできれば落ち着いた色にする)とセンスがよく見える」という理論がありますが、それとよく似ていますね。

文字のサイズについては、プレゼンする場所にもよりますし、諸説ありますが、筆者は1つのスライドにつき8行以内、文字サイズはタイトルが32ポイント以上、本文は28pポイント以上を目安にしています。

せっかく作ったスライドの見栄えをわざわざ整えるなんて面倒くさいと思いました? 
確かに文字の見た目は、発表の内容とは関係ありません。
にもかかわらず、真面目な発表のときには、フォントの細かな差異から聴衆には大きな違和感が生じ、それだけで「聞く価値のない稚拙な発表」というイメージを植え付けます。
忙しい日常から、なけなしの時間を捻出して頑張って作ったスライドが、ひと目で「見る価値なし」の烙印を押され、見向きもされなくなる可能性があるなんて、悲しすぎませんか?

フォントを統一することは、内容を洗練させる以前の、「発表を聞いてもらう」というスタートラインに立つために重要なのです。

箇条書きは点の種類と文頭を揃える

箇条書きの「●」「■」「・」などの記号の種類は、同じ次元ごとに揃えることで、読み手にわかりやすくなります。
また、箇条書きの種類ごとに文頭の位置を統一するのも重要です。
カテゴリーが小さくなるごとに、文頭の位置を下げましょう。

どの記号を選ぶかは自由ですが、例えば筆者の場合は、
カテゴリーが大きな順に「■」>「・」>「-」とすることが多いです。
一番大きなカテゴリー以外は、箇条書きのカテゴリーごとに字下げを行い、どの次元(抽象度)の話か、一目でわかるようにします。

つまりこんな感じですね。

我が家のペットたち
■犬
 ・柴犬
   -ポチ(3歳オス)
 ・ゴールデンレトリバー
   -ソラ(7歳オス)
   -マロン(5歳メス)
■猫
 ・スコティッシュフォールド
   -ムギ(10歳メス)
■鳥
 ・オカメインコ
   -ポポ(9歳オス)
 ・文鳥
   -ピピ(2歳メス)

本来はスライドを2枚以上に分けるべき長さですが、構造が分かりやすいよう、あえてそのまま並べています。
こうしてみると、「■」の位置、「・」の位置、「-」の位置が揃っていることがわかります。
「■」は、ペットの生物の種類
「・」は、ペットの生物カテゴリー内での分類
「 – 」は、ペット個体別の名前
のように次元を揃えて記載していますね。

テキストボックス・図形の位置を揃える

テキストボックスや図形がスライド内に複数ある場合、その位置を揃えるとキレイです。
これらオブジェクトの端(特に左端と上端)または中央が微妙にズレていると違和感が生じて、内容が稚拙に見えて損をしてしまいます。

少なくとも、
・上下に並べる場合であれば左右どちらかの端、または中央を揃える
・左右に並べる場合は上下どちらかの端を揃える
は必ず行うようにしましょう。

位置を揃える方法は、
①手作業でテキストボックスを動かす
②上にある「図形の書式設定」タブの機能を使う

の2パターンがあります。

①は、他のオブジェクト(テキストボックスや図形)と端または中央が揃った時点でガイド線が出ます。
手で動かすと、左右を動かそうとしたときに上下にも動いてしまったりして不便な場合、キーボードの矢印を使うと便利です。
オブジェクトの周りの枠線をクリックし、オブジェクトを選択した状態でキーボードの矢印(←↑↓→)を押すと、他の方向にはブレずに矢印の方向だけにオブジェクトを動かすことができます。

中心位置を保ったままオブジェクトの幅を広げたり狭めたりするには、Shift+矢印が使えます。
微調整したい場合は、さらにCtrlを加えて、Ctrl+Shift+矢印とすればOKです。

②は、特に2つ以上のテキストボックスを揃えたい場合に便利です。
揃えたい複数のオブジェクトを同時選択(Ctrlを押しながら一つずつクリック)してから

Powerpointの上のタブの「図形の書式設定」→「整列」→「左揃え」

で左端を揃えることができます。
この機能を使うと、上・下・右や中央揃えなどもできます。

なお、できる限りスライド同士でもこの端の位置を揃えると、さらに美しいスライドになります
たとえばすべてのスライドで文を左揃えで書いている場合なら、文字の始まり位置をスライド間全体で揃えると綺麗です。
(ただし一部スライドで文が非常に少ない場合は、そこだけ位置を下げて中央に近づけるのはアリだと思います。)

スライド内の文章

人は色数が少なく余白が大きいものほど高級で大人っぽく感じ、色数が多くたくさんのことが書いてあるものほど乱雑で子供っぽく感じます
シックで洗練された服を着ている大人と、ポップで装飾のたくさんある服を着た子供、どちらのプレゼンテーションの方が信頼できそうでしょうか? 当然前者ですよね。

このような人間の特性を踏まえ、スライドの文字をできうる限り減らしていきましょう
(ついでに文字の色も再度確認しましょう。一見同じに見えて、まだ微妙に違う色が混ざっていることが結構ありますよ。)

字が多すぎると読む気が起きない……

「。」はつけない 「、」もなるだけ削る

スライドでは、削っても意味が変わらないものはどんどん削りましょう
スライドの文章は本や書類の文章ではないので、「。」は不要です。「、」も必要最低限以外はなくしていきましょう。

「。」や「、」が必要だと感じた場合は、前後で文章が切れないか(改行できないか)を必ず考えるのが大事です。
スライドの洗練化とは、不要なものを削ることと見つけたり、です。

一文は短く

スライドは書類と違い、一瞥で内容を理解するものなので、長い文は内容を把握しにくいです。
長い文章を短くすると、読みやすさが増し、プレゼンの内容が一気に聴講に伝わりやすくなります。
文章は長くても2行以内に収め、2行を超えるようであれば要点のみにするか、文中の同次元の内容を箇条書きにするなどの対応をすると良いでしょう。

先述したものも含みますが、以下の点が改善できないかチェックしてみましょう。

・「です」「ます」「である」などのなくても意味が通る動詞を消し、体言止めにする
・「~と報告された」「~という」などの伝聞を示す動詞を削除する
・「~に関しては」「~については」のような曖昧な表現を「~は」とシンプル化する
・「、」の前後で文章が切れないか(改行できないか)を考える

これらを一つ一つ丁寧に修正し、文字数を減らしていきます。
すると、文字の情報量が少なくなったにも関わらず(いや情報量が少なくなったからこそ)、聴衆はスライドに書かれた内容を読みやすく、ひいては理解しやすくなります。

「ビジーなスライドで申し訳ありません」という謝罪では、誠意は伝わるかもしれませんが、スライドの内容は伝わりません。
発表すべき内容をすべて画面に並べるのはやめ、いちばん大事な部分だけを記載して、補足事項は口頭で伝えるようにしましょう。
私達が作っているのは、発表原稿ではなく、発表用のスライドなのですから、言うこと全部を記載する必要はないのです。

文の改行の位置は文節に

2行にわたる文の改行の位置は、必ず文節にします。難しい場合でも、単語で切ります。
単語の途中で改行するなど言語道断です

文節というのは、言葉を細かく区切ったときに「意味が不自然にならない」最小の単位です。
改行の位置は、文節というだけでなく、できるだけ文の意味が切れるところにすると、より読みやすくなります。

試しにこの文(↑)を実際に分節で区切ってみましょう。

改行の/位置は/文節と/いう/だけで/なく、/できるだけ/文の/意味が/切れる/ところに/すると、/より/読みやすく/なります。

(文節の文頭は必ず自立語(名詞、動詞、形容詞、形容動詞、副詞、連体詞、接続詞、感動詞)になります。
「改行のネ/位置はネ/文節とネ/いうネ……」のように、「ネ」を入れると分かりやすいよ、と中学校教師の友人に教えてもらいました。そういえば遠い昔に習いましたね……)

これら文節のうち「文の意味が切れるところ」で改行すると、以下のようになります。

改行の位置は文節というだけでなく、
できるだけ文の意味が切れるところにすると、
より読みやすくなります。

ご覧の通り、文の意味が切れるところは、「文を書いたときに『、』を入れても違和感のないところ」と考えるとわかりやすいです。

スライドにする場合は、さらに省略できるところは削ります。
皆さんはどのようにされますか?

筆者であれば、以下のようにすると思います。

改行の位置=文節
できれば文の意味が切れるところ
  ▼
より読みやすく

スライドにはこのように記載して、口頭では、先述の「改行の位置は文節というだけでなく、できるだけ文の意味が切れるところにすると、より読みやすくなります」と言えば、聴衆にはメッセージが十分に伝わると思います。

箇条書きの各要素の位置を揃える

たとえば左揃えで書く場合、同じ次元の要素は、文頭の位置をぴったり揃えましょう。
横並びにする場合も、文の一番上 or 一番下 or 正中線を1本の線上に揃えると綺麗に見えます。

また、箇条書きの1文の中で改行する場合、2行目の文頭が1行目の文頭と揃わず困ることはありませんか?
1文の中で改行をするときに、Enterキーではなく、Shift+Enterキーを同時に押すと、1行目と2行目の文頭の位置がピッタリ一致します
なお、普通のEnterキーによる改行とShift+Enterキーによる改行は、行間(行同士の幅)も違うので、使う改行は統一するようにしましょう。
忘れがちですが、箇条書きの行間の幅も揃っているか気をつけましょう。

最後のスライド全体の修正

スライドを細かなところまでシンプル化してようやく、スライドの話の流れが掌握できるようになります。
ここでもう一度全体をみて、そのうちのほんの一部に大鉈をふるいましょう。

本筋と直接関係のないスライドが紛れていないか確認する

すべてのスライドが発表の本筋に直接関係しているものか、余談や面白いと思っただけの情報を入れてしまっていないかを、1ページずつ注意深く確認しましょう。
「発表資料はこれで完成! 完璧だ!」と思ってからチェックしても、だいたい1、2枚はそういう不要なスライドが見つかるものです。

1スライド1テーマになっているかを確認する

スライドに情報を詰め込みすぎると、逆に聴衆には、内容が一つとして伝わらなくなってしまいます。
1つのスライドの中に書くのは1つのテーマだけに必ず絞るようにして、スライドを整理しましょう。
2つ以上のテーマがある場合には、スライドを複数に分けるか、そもそもどれかのテーマは削除できないかを考えてみましょう。

1つのスライドに複数のテーマが入っていないか確認しよう

同じテーマであっても、1つのスライドには1つのグラフまでにした方が読みやすいです。
例外があるとすれば、全く同じ解析のグラフを別のグループで比較するために並べる場合や、1つのグラフ中の1項目のみをさらに詳述するような場合くらいでしょう。
前者は、一度2つのグループを重ねて1つのグラフで表示できないかを考えると良いです。
後者はグラフ中の1項目のみを抜き出したことが一目瞭然なように表現します。
どちらも初心者には、よほどスライド内に余白がある状況で限りオススメはしませんが……

1スライドには1グラフまでにしよう

まとめ

この記事で挙げてきた点を修正するだけで、あなたのスライドは見違えるように綺麗に、そして何より聴衆に伝わりやすくなったと思います。
あとは、発表の練習をするのみです!
筆者も研究業界の片隅から応援しております。

何度も練習あるのみ!

スライドの見栄えって大事なんだな~と思われた方は、次回、新規にスライドを作る前に、研究発表のデザインで有名なブログ「伝わるデザイン」で一通り勉強されると良いでしょう。
学会で研究発表を行いたい医療者なら、「あなたのプレゼン誰も聞いてませんよ!―シンプルに伝える魔法のテクニック」もかなり勉強になると思います。

他にもスライドの内容を伝えやすくするために大事なポイントを見つけたら、適宜追記していきます。
ここも大事だよ~!ってところがあれば、お教えいただければ幸いです。

参考文献

  1. 「伝わるデザイン」, https://tsutawarudesign.com/
  2. 渡部欣忍, 「あなたのプレゼン誰も聞いてませんよ!―シンプルに伝える魔法のテクニック」, 南江堂, 2014
  3. 森重湧太, 「一生使える見やすい資料のデザイン入門 完全版」, インプレス, 2024
  4. 木下是雄, 「理科系の作文技術」, 中公新書, 1981
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