【Q&A式】初期研修医の先生にお勧めの本

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今回は普段と趣を変えて、初期研修医の先生方(やときに他科の先生方)からたびたび頂く、「こういうときに読む本を教えて欲しい!」というご質問に対して、お勧めの本を挙げていこうと思います。

毎年新規入職の時期になると、各所で色々な本がお勧めされていて、目移りしてしまいます。
これはダメダメ研修医であった私の実体験なのですが、勉強家の先生方が推す本って、1つの狭い分野で何冊も紹介されていたり、読んでみると専門用語が多く中身が深すぎてスッと読めなかったりして、ちょっとハードルが高かったりすることもあるんですよね……。

そんなわけで、当記事では初心者向けのブログらしく、超楽に読める」または「勤務中困った時にサッと辞書のように引ける」本だけに絞って、研修医の先生の疑問にお答えするQ&A方式でご紹介していきます。

ざっくり「救急外来勤務の本」「エビデンス・論文・臨床研究関係の本」「医師生活全般の本」に分けていますが、基本的に最初に紹介するものほど初級者向けで、徐々にレベルアップしていきます。
参考になれば幸いです。

目次

救急外来勤務の本

Q. とりあえずER診療に役立つ本を1冊だけ読むなら?

A. 新装改訂版 もう困らない 救急・当直 当直をスイスイ乗り切る必殺虎の巻!

救急の本って、最近はめちゃくちゃ大量に出てて、良い本が星の数ほどあるんですよね。
それだけにオススメしたい本もめっちゃ多い。

その中で、「これから救急外来で働かないといけない初心者が、最初に読む本として1冊だけ選んで欲しい」と言われたときは、これを挙げています。
各科ローテート中も救急外来勤務はあるという研修病院は多く、「忙しいけど、何か軽~く1冊読むくらいならなんとか……」という研修医の先生にオススメです。

周囲の研修医の先生方の誰に聞いても持っている人気書籍なので、今更紹介するまでもないのかもしれませんが(笑)。

主訴別に、「一番最初に考えるべきこと」や「誤診の落とし穴」などが、実際の臨床現場で動く順に解説されており、即戦力になります。
フルカラーで図やチャートが多く、患者さんを前にした時に何をしたらいいか、ひと目でわかるところが初心者にも優しい
です。

鑑別診断を挙げながらの問診のコツはもちろんのこと、救急外来で行うべき最低限+αの検査や治療も網羅しています。

さらには本を買うと電子版へのアクセス権が付いており、スマホさえあれば好きな時にどこでも参照できるのが至れり尽くせり。
臨床で働くとわかりますが、本を持ち歩くのは若干面倒です。

今は電子化されている本も多いので、まずは紙の本を買い、良い本なら電子書籍で……と2冊買う羽目になるのですが、この本は1冊分の値段で両方ゲットできるのでお得です。
(不思議なことに、デジタルネイティブ世代でも、紙の本をすっ飛ばしていきなり電子書籍だと、なかなか読まない&読んでも頭に残りにくいんですよね……)

そんな超初心者のファーストステップにオススメしたい救急診療参考書です。

Q. 手技を行う直前にサッとやり方を確認するなら?

A. 診察と手技がみえる (vol.2)

楽天ブックス
¥6,600 (2024/11/13 00:52時点 | 楽天市場調べ)


この本は学生のときに買って持っている人も多いと思いますが、これが意外と研修医どころか後期研修医になっても使えます
研修医にとって手技は関心の的で、筆者もご多分に漏れず手技関係の本はたくさん購入しましたが、今にして思えばこれ一冊で必要十分でした
救急外来で必要な手技のほとんどが網羅されていますので、恥ずかしがらずに是非研修先に持ち込んで下さい。

図が豊富でビジュアル的に理解しやすいので、筆者も手技のやり方を研修医の先生に質問されたときは、時間に余裕があればこれを広げて(±図を描いて)説明しています。

Q. 研修医同士で勉強会をするときの題材にできる本は?

A. 研修医当直御法度 百例帖 第3版

三輪書店
¥4,180 (2024/11/17 16:13時点 | Amazon調べ)

特に救急医がいない病院の研修医の先生達から多いのがこの質問です。
この本は、日本全国の病院で研修医への「出前教育」を行ってきた救急医の寺沢先生が、研修医の先生たちのよくある失敗談をコツコツ集めて作ったものです。

1症例が2~4ページ程度でまとまっており、勉強会の題材としてとても使いやすいです。 
全国の研修医の先生達が実際に陥ったピットフォールやその回避方法が平易な言葉で記されており、まさに”救急医の知恵”が詰まった一冊といえます。

この本で勉強会を始めた研修医の先生達から必ず聞く言葉を紹介しておきましょう。
僕の失敗を陰で見て書かれたのかと思った。もっと早く読んでいれば同じミスはしなかったのに……!

読んで損なしというか、読まないと損する本と言っても過言ではないでしょう。

Q. マイナー救急患者さんが来たときに辞書的に使える本は?

A. マイナーエマージェンシー 原著第3版


こちらはER型救急医なら誰もが使ったことがある、マイナー救急診療本の決定版です。

この本には、
「釣り針が指に刺さった!」
「転んで歯が折れた!」
「ファスナーに陰茎を挟んだ!」
「爪の下に出血して痛い!」
「子供が鼻にBB弾を入れて取れない!」
「耳に虫が入ってうるさい!」etc. etc…
命には関わらないけど処置を急ぐ疾患の対処法が、たいてい載っています

ただし分厚すぎて持ち歩くのには向かない上に、結構お高いので、この本が救急外来になければ、1冊置くよう病院と交渉することをオススメします

私は色々な病院で救急外来勤務をしていますが、未だにこの本ナシでは安心して患者を受け入れられないので、1冊自炊してパソコンに保存し、いつでもこっそり見られるようにしています。

Q. 救急外来に慣れてからピットフォールを学ぶなら?

A. 研修医当直御法度 第7版

タイトルからお察しでしょうが、こちらも寺沢秀一先生達の書かれた本です。
マニアの間では、先ほどの青い百例帳が「青本」こちらが「赤本」と呼ばれています。
(もう一冊、後ほど紹介する「黄本」があります。笑)

今でこそ目移りするほどに巷で溢れている救急診療の参考書ですが、この本は、我が国における救急診療本の先駆け的存在と言って良いでしょう。

これはしばらく救急外来で働いてから読むと「ああ~なるほど!」と膝を打つ本なのですが、重要ポイントが箇条書きなので、読みやすいものの、初心者にはちょっとイメージが湧きにくいと思います。
しかしある程度臨床経験を積んでから読むと「なんだこの本……深いなぁ……」と唸ること請け合いです。

Q. 救急外来でデキレジの名をほしいままにしたいなら?

A. ステップビヨンドレジデント <シリーズ>

このシリーズのキャッチコピーに「研修医は読まないで下さい」とあるように、本書には我々上級医が普段ドヤ顔で研修医の先生達に教えている診療の重要なコツがたくさん詰まっています。

内容のレベルの高さとは裏腹に、本文自体はくだけた口調でスルスルと読めるので、お手軽にワンランク上の研修医を目指したい人にはオススメです。

なお、筆者はワンランク(いやもっと?)下の研修医だったので、ここに載っている内容はどれも上級医の先生方に直接丁寧に教えてもらっていました。テヘペロ。

エビデンス・論文・臨床研究関係の本

筆者は大学院で臨床研究もしているので、そちら関連の本も紹介しておきましょう。
といっても堅苦しいのはナシで、実臨床でも明日から役に立つような本だけを厳選しました

臨床研究に興味のある人なんて、研修医の皆さんの中には10人に1人程度しかいないと思っていますが、日進月歩の医学の源流である臨床研究と医師は、切っても切り離せない関係にあります

ふと興味がわいたとき、または必要に駆られたときのため、誰でも気楽に読めるような本だけをご紹介します。

Q. テレビの「○○には△△が効く」という話に反論できるようになりたいなら?

A. 「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「これが臨床研究に関するオススメの本?」と訝しむ声が聞こえてきそうです。
お察しの通り、この本は医療者向けではなく、一般の方向けです。

この本では、臨床研究を学ぶ上で一番重要な「因果関係」という要素が丁寧に解説されています
そして一般の方向けの本でありながら、「因果関係」と「相関関係」の違いを習うことのない日本の医師の多くが、なんとなく感覚では理解していても、上手く言語化できなかった内容ではないかと思います。

皆様も、テレビや通販でよく見かける「○○には△△が効く!!」「□□をやる人は××になる!」みたいな話に、「コレうさんくさいな……」と感じたという経験があると思います。
しかし、そのどこに明確な間違いがあるのか、きちんと反論できるでしょうか?
この本を読むと、それを専門用語を使わず誰にでも分かるような言葉で、論理的に反論できるようになります。

関連があるだけのものが「原因」として流布される風潮に対して皆さんが抱えているモヤモヤが、読み終わる頃にはスッキリしていることでしょう。
因果関係と相関関係の違いが理解できるようになったら、それだけで今日から見える世界は大きく変わります。

それはあなたの医師人生だけでなく、人生そのものを変えるかもしれません。

Q. 論文の読み方のお作法を知りたいなら?

A. 僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。〜論文をどう読んでどう考えるか

研修医なら誰もが好むと好まざるとにかかわらず、抄読会などで読む機会のある医学論文
この本では、医学臨床研究論文の読み方が、わかりやすく解説されています。

作者の後藤先生は、優秀な研究者であると同時に臨床の現場で働く救急医です。
そのためこの本も、アカデミックな視点よりはむしろ、臨床現場の医師にとっての論文とはどのような立ち位置で、どのように解釈すれば良いのか、という視点に寄せて書かれています
その臨床と研究に対するバランス感覚の良さが、ともすると片方に偏りがちな我々医師という人種にも、安心してオススメできる理由です。

なお、「いや~自分は抄読会でお茶を濁したいだけなんだけど。臨床の勉強でいっぱいいっぱいだから、論文のためだけに本1冊読む気力はちょっとないわ……」という方は、とりあえずこちらの記事をご一読下さい

最小限の労力で、論文がかなり読めるようになるかと思います。

Q. 臨床研究をやってみたくなったら?

A. 臨床研究の道標 第2版〈上下巻〉

昨今は、臨床研究に興味を持つ研修医の先生も増えてきました。
臨床と研究の距離が近くなるのは本当に素晴らしいことですね。

この本は、大筋が軽快な会話劇で進むため、これまで接してこなかったはずの臨床研究のハウツーが、スルッと頭の中に入ってきます

臨床研究=統計解析と思っている方も多いですが(かくいう私も大学院を目指す前まではそう思っていました)、臨床研究は解析手法よりも、いかにその計画やデザインそのものが大事であるか、ということを学べる本です。
この本を読み終えたあかつきには、日本全国で見かける「とりあえずデータを集めてから、どんな研究をするか考える」というスタンスで行う研究がいかに不毛かを知ることになるでしょう。

皆様の中でも、いつか(多くはだいたい後期研修医を終える前後に)臨床疑問にぶつかり、「これについて調べてみたいな……」とふと思う日が来る人は案外多いはずです。
そんなときには、いきなり研究を始める前に、是非この本を読んでみることをオススメします。

医師生活全般の本

最後に医療者としての姿勢や、人生について考えたいという人向きの本です。

Q. 医療者としてのプロの姿勢について考えたいなら?

A. 話すことあり、聞くことあり—研修医当直御法度外伝

さて、この記事での登場は三度目になります「研修医当直御法度」シリーズの「黄本」です。
この本は「赤本」「青本」と違い、医学書ではないので縦書きです。

エッセイ集のような感じで非常に読みやすく書かれていますが、読み返すたびに新しい発見をくれる、大変味わい深い本です。

実はこの本に書いてあることは、本当にごくごく当たり前のことばかりです。
しかし、あらゆるリソースが常に限界ギリギリの忙しい臨床の現場で、その当たり前を実際に行うことがいかに難しいかということが身にしみるようになると、この本の良さがじわじわ染みるようになると思います。 

おそらく若い頃に読むのとベテランになってから読むのでは、本書に対する印象はまったく異なると思うので、若い時に一読して欄外に感想をメモしておき、何年か後に読んでみるとかなり面白いはずです。

この本を読んで抱く感想は、あなたの医療従事者としての心構えの”試金石“になると思います。

おわりに

以上、オススメの本をQ&A方式でまとめてみました。
医学の本探しで迷う皆様の参考になれば幸いです。

こういう本が知りたいよ~!というご要望があれば、(筆者に答えられるものであれば)追記いたしますので、お問い合わせフォームかtwitter(@nonbiriQQE)の方まで気軽にお声がけ下さい。

皆様の研修医人生に、幸多からんことを!

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