【超初心者向け】心肺蘇生、最初の5分ですべきこと

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皆様、心肺停止で搬送されてきた患者さんの心肺蘇生、とくに二次救命措置(Advanced Cardiac Life Support: ACLS)は一通りできるでしょうか?
できるよ!という方は、この記事を読む必要はございません。回れ右をして他の記事へどうぞ。
(そんな方には「どんな重症患者もワンパターンで診られる方法」とか「訴えられない救急外来カルテの書き方」とかがオススメです。)

心肺蘇生のやり方は、AHAのアルゴリズム(英語版)がフローチャートでまとめられていますし、日本語版のAHAガイドラインのハイライトもあります。
しかしガイドラインのACLSのアルゴリズムをちゃんと読んでいても、心肺蘇生に慣れていない人がいざ現場に出ると、とっさに「ガイドラインに書いてあった処置のどれからやっていいのか?」が分からなくなることがあります。

本記事は、

  • 心肺蘇生(ACLS)のやり方がよく分からない、診療が怖い
  • 心肺停止の患者さんを前に、何をどの順でしていいのか分からず立ちつくしてしまった
  • 初動が生死を分ける心肺蘇生を、最初の5分だけでも最低限こなせるようになりたい
  • せめて周囲のスタッフに呆れられないようになりたい

そんなかつての筆者のような方たちのための記事になっています。
超・超初心者向けに、必要最低限の情報に絞ってお伝えします。

それではまず心肺蘇生の大前提として、以下の2点を頭に叩き込みましょう。
この2点をいっときも忘れることなく心配蘇生の現場で動くことができれば、超初心者はそれだけでもう及第点です!

<心肺蘇生の大原則>
①胸骨圧迫はとにかく絶え間なく続ける(中断時間は最小限!)
②最も重要な蘇生処置は電気ショック、次点でアドレナリン静脈投与(適応を見逃さず速やかに行う!)

①胸骨圧迫
胸骨圧迫は心肺蘇生のベース(土台)です。
全臓器のなかでもっとも低酸素のダメージに弱い脳に、酸素を含む血液を送るために必須の処置です。

何か他の処置をするときも、波形チェックの瞬間以外は絶対に中断しないようにしてください。

②電気ショックとアドレナリン静脈投与
電気ショックとアドレナリン静脈投与は、心肺蘇生で最重要となる最初の治療の選択肢です。
電気ショックができる波形には電気ショックを、電気ショックできない波形、もしくは電気ショックしても改善しなかったものにはアドレナリンを静脈投与します。
電気ショックは、変な動きをして全身に血流を送れない心臓を一旦止めるものです。
アドレナリンは、動いていない心臓に活を入れて無理やり動かそうとするものです。


初回の波形チェックで電気ショックの適応があると判断されたら電気ショックを、電気ショックの適応がないと判断されたらアドレナリン投与を、できるだけ早く行いましょう!

まずはざっくり流れをみていきましょう。

STEP
救急車到着前

① 目撃者の有無
② バイスタンダーの有無
③ 初期波形(ショック適応か?)
④行った処置(電気ショック、挿管、静脈路確保、アドレナリン静脈投与)
の4つを確認する

STEP
患者搬送時

※ストレッチャーへの移乗と波形チェックの瞬間以外は胸骨圧迫を絶え間なく続けること!
① 心電図モニターを貼る&ルート確保
② 頸動脈に触れながら、心電図モニターの波形をチェック
③ 脈が触れなければ「心肺停止(CPA)」
 A. ショック適応波形(VF/脈なしVT)→電気ショック [注:アドレナリン投与なし]
 B. ショック非適応波形(PEA/Asystole)→アドレナリン静脈投与 [注:電気ショックなし]

STEP
波形確認直後(0分)

① 胸骨圧迫30回
② 人工呼吸(マスク換気)2回
③ ①と②を30:2で繰り返す

STEP
初回「波形チェック」の2分後

① 頸動脈に触れながら、心電図モニターの波形をチェック(ショック適応波形を探す)
 A. ショック適応波形→電気ショック&アドレナリン静脈投与
 B. ショック非適応波形→胸骨圧迫再開(アドレナリンなし、電気ショックなし)
② 波形チェックを2分おきに繰り返す

STEP
初回「アドレナリン投与」の4分後

①初回のアドレナリンを投与したときから、4分おきにアドレナリンを投与

STEP
その後(心肺蘇生中)

① 自己心拍が再開するまで、胸骨圧迫と人工呼吸を続ける
② 2分おきの波形チェックと4分おきのアドレナリン投与を繰り返す
③ 心停止の原因を探し、介入する
④ 本人や家族の急変時対応の希望を確認する

STEP
心拍再開後

① 重症患者として診療を行う
② 治療可能な原疾患を探す

それでは、1ステップずつみていきましょう。

目次

Step1. 救急車到着前

ホットラインで収拾すべき情報のうち、心肺停止に特異的なのは以下の4つです。

① 目撃者の有無
② バイスタンダーの有無
③ 初期波形(ショック適応か?)
④行った処置(電気ショック、挿管、静脈路確保、アドレナリン静脈投与)

まず最初の3つの情報によって、患者の助かる見込みが大まかにわかります。
①~③によって、④の救急隊が行った処置は変わってきます。

① 目撃者の有無

「目撃者の有無」とは、患者さんが目の前で倒れたのを見た人がいるか、ということです。
誰かの目の前で倒れて、その人がすぐに救急車を呼べば、患者さんが心肺停止から助かる可能性は大幅に上がります。

② バイスタンダーの有無

「バイスタンダーの有無」とは、発見者がすぐに胸骨圧迫を始めたか、ということです。
発見者が気づいてすぐに胸骨圧迫を開始すれば、患者さんの脳が低酸素によるダメージを免れ、心肺停止から助かる可能性が大幅に上がります。

③初期波形(ショック適応か?)

心電図モニターの初期波形は全部で4種類あり、電気ショックの適応か否かの2択が重要です。
電気ショックが行える波形は、蘇生の可能性が結構高いです。

<ショック適応波形>
・心室細動(VF)
・無脈性心室頻拍(pulseless VT/脈なしVT)
 →すぐに電気ショック!

<ショック非適応波形>
・無脈性電気活動(PEA)
・心静止(Asystole)
 →電気ショックの適応なし

ショック適応であれば、救急隊が自動体外式除細動器(AED)で電気ショックをしているはずですので、それも④で確認します。

④行った処置(電気ショック、挿管、静脈路確保、アドレナリン静脈投与)

電気ショックを行ったかどうかや、救急隊の特定行為として挿管、静脈路の確保、アドレナリン投与の有無などを聞けると良いでしょう。

Step2. 患者搬送時

いよいよ診察開始ですが、どんな処置を行うときも、とにかく胸骨圧迫は絶え間なく続け、中断を最小限にすることが重要です!
胸骨圧迫を止めていいのは、ストレッチャーへの移乗するその瞬間と、波形チェックを行う瞬間だけです。
処置に気を取られて、胸骨圧迫の手を休めることがないように気をつけましょう。

患者をストレッチャーへ移乗させたら、
①心電図モニターを貼り、ルート(静脈路)の確保に取り掛かります。
②頭元に立つ一人が頸動脈に触れながら、心電図モニターの波形をチェックします。
③脈が触れなければ「心肺停止(CPA)」と判断します。
ショック適応波形(VF/脈なしVT)であれば、電気ショック [注:アドレナリン投与なし]
ショック非適応波形(PEA/Asystole)→アドレナリン静脈投与 [注:電気ショックなし]
を行います。

①心電図モニターを貼る&ルート確保

それぞれ別のスタッフが、心電図モニターを貼り、ルートの確保を行います。

②頸動脈に触れながら、心電図モニターの波形をチェック

頸動脈に触れながら、心電図モニターの波形をチェックします
「頸動脈の拍動の触知」+「心電図モニターの波形チェック」を同時にやる
のがミソです。初心者は同時にやることをつい忘れがちですが、どちらか一方では絶対にダメなのです。

特に頸動脈の触知を忘れて心電図波形だけ見て、「正常心電図」あるいは「緊急性のない不整脈」と判断してしまうことで、大きな医療事故になった症例は、残念ながら枚挙に暇がありません。
「心電図モニターが正常」なのでそれだけを見て安心して、誰も「頸動脈の拍動を確認しなかった」というのは、院内急変のときなどに陥りがちなピットフォールです。
当然、心肺停止を見逃したことになり、現場に医療従事者が居合わせながら蘇生を行えなかった……という最悪の結果を招く可能性があります。

逆に、頸動脈の拍動を確認せず、本当は脈があるのにVTに心停止のとき同様の同期しない電気ショックを行うと、RonTを引き起こし、致死的なVFを誘発してしまうことがあります。
頸動脈の拍動を触知しない(=心肺停止)ときに行う電気ショックは、同期しない「除細動と呼ばれます。
対して脈のあるVTなどの不整脈に対して行う電気ショックは、同期を行う「カルディオバージョンです。

③脈が触れなければ「心肺停止(CPA)」

頸動脈の拍動を触知しなければ「心肺停止」です。電気ショックが必要な波形かを判断します。

<心停止のときの心電図の波形>
・心室細動(VF):心電図がギザギザ
・無脈性心室頻拍(pulseless VT/脈なしVT):心電図がVTかつ脈が触れない
 →すぐに電気ショック!

・無脈性電気活動(PEA):心電図波形は出るが脈が触れない
・心静止(Asystole):心電図がフラット
 →電気ショックの適応なし

 ・ショック適応波形(VF/脈なしVT)→電気ショック [注:アドレナリン投与なし]

ショック適応波形は以下のような波形です。

心室細動(VF)

VFはこんなふうに、適当に手を震えさせながら線を引いただけみたいに心電図がギザギザです。
(というか実際、これは心電図の紙に筆者が適当に手を震えさせながら線を引いたのですが……)


無脈性心室頻拍(pulseless VT/脈なしVT)

脈なしVTは、心電図がWide QRSで、心拍数がおおむね120~250回/分の頻脈の、上のような波形です。
(こちらも筆者の手書きなので、細かいところには目をつむってくださいませ。)

電気ショックの適応となる波形であるVFや脈なしVTは、心肺停止状態(心臓が血液を送るポンプとして機能していない状態)ながら心臓はブルブルと動いています
そこで電気ショックで一旦心臓の異常な動きを止めてリセットすると、また正常に動き出す可能性があるのです。

VFや脈なしVTを止める最善の一手が電気ショックです。
ショック適応波形を見つけたら速やかに電気ショックを行いましょう。
その際は、まわりに患者さんに触れたり、ベッドにもたれかかったりしてる人がいないかよ~く確認してくださいね!

電気ショック一発で自己心拍が再開することも多く、このタイミングではアドレナリンは投与しません。
2分後に波形を再チェックしても心停止だった場合に、はじめて投与します。

ショック非適応波形(PEA/Asystole)→アドレナリン静脈投与 [注:電気ショックなし]


PEAの波形は様々です。
一見普通の心電図に見える波形から、ちょっと変な脈まで。
脈拍数も徐脈から頻脈までそれぞれです。
VTやVFではない電気活動を伴う心肺停止は、PEAと呼ばれます。

Asystoleはフラットな1本の線になっています。
ドラマを観ているとたまに御臨終のシーンで出てくる、あの「ピ——」ってやつですね。

ただし、一見心電図がフラットにみえても、筋電図みたいなわずかな基線の揺れが実はVFだった、ということが結構あるので注意しましょう!
少しでも基線が揺れて見える場合は、心電図の感度を上げてよく評価してくださいね!

電気ショックが行えない波形であるPEAやAsystoleでは、心臓はほぼ動いていません
そのため、電気ショックで心臓の動きを止めても意味がありません。

「フラットな心電図に電気ショックをすることを、医学用語で『トドメを刺す』と言います」——と筆者の母校の救急部教授はいつもおっしゃっていました。

心臓がほぼ動いていないPEAやAsystoleでは、代わりにアドレナリン静脈投与を行います
アドレナリンは、心収縮力を強め心拍数を早めるなどの作用があります
たとえは悪いですが、シーンとしている心臓に「動け!」と鞭打つような感覚、とイメージすると理解しやすいかと思います。

余談:波形の呼び方

・筆者がこれまで勤めてきた各病院では、Asystole(エーシストール)は略して「エーシス」と呼ぶことが多かったです。
・「一見心電図がフラットにみえるが、わずかな基線の揺れがあり実はVF」という波形を、筆者は「さざ波VF」と習ったのですが、調べた限り正式な医学用語の中ではこの単語は見つけられませんでした。
 かなり言い得て妙だと思うのですが……誰の命名だったのでしょうか。

Step3. 波形確認直後(0分)

先述のように、波形に合わせて電気ショック、またはアドレナリン1mg静脈投与を行います。
波形確認や電気ショック後はすぐさま①胸骨圧迫30回と②人工呼吸(マスク換気)2回を30:2で繰り返し、2分後の波形再チェックに備えます。
初回の波形チェックの時点から、タイムキーパー(外回りの看護師さんにお願いすることが多いです)に2分のタイマーをセットしてもらいましょう。
アドレナリンを投与していれば(つまりPEAとAsystoleの場合)、同時に4分のタイマーもセットしてもらいます。

アドレナリンの投与間隔の推奨は3~5分と幅がありますが、2分ごとに波形をチェックするので、それに合わせて4分おきにしておくと混乱が少ないです。
2分のタイマーは波形チェックのタイミングを、4分のタイマーはアドレナリン投与のタイミングを知らせてくれます。
それぞれの時間がきたら声をかけてくれるよう、タイムキーパーにお願いしておきましょう。

① 胸骨圧迫30回

胸骨圧迫の深さは、5cm以上で6cmを超えない程度、つまりは5cmから6cmの間です。
胸骨圧迫の速さは、100~120回/分(bpm)
です。

胸骨圧迫の深さ

胸骨圧迫の深さは、5cm以上で6cmを超えない程度です。
胸骨圧迫のときのコツは、胸骨を圧迫したあとは、きちんと姿勢をもどして両腕を上げて、患者の心臓に全身臓器からの血液が戻るようにすることです。
胸骨圧迫を行う者の両腕を上げきらずに患者さんの身体にもたれかかってもダメ、逆に両腕が患者さんの胸を飛び跳ねてもダメです。

胸骨圧迫の速さ

胸骨圧迫の速さは、100~120回/分(bpm)です。
皆さんご存知「アンパンマンのマーチ」が約100回/分、スピッツの「空も飛べるはず」が約120回/分です。
医療従事者が胸骨圧迫を行う場合は120回/分に近いほうが良い、という報告もあったりしますが、焦ると挙動は早くなるものなので、初心者なら「少し早めのアンパンマンのマーチ」で良いと思います。
「そっうっだっ 恐れない~で み~んなの たっめっにっ」と心のなかで歌いながら胸骨圧迫をはじめましょう。

有効な循環を保てる適切なレベルの胸骨圧迫は短時間で本当に疲れるので、どんどん交代していくか、LUCUS®のような自動心臓マッサージシステムの力を借りましょう。

② 人工呼吸(マスク換気)2回

挿管をするまでは、胸骨圧迫を30回やったあとに、2回のマスク換気を行うことを繰り返します。
もし気管挿管チューブが入っている場合は、胸骨圧迫と換気はは非同期に行って大丈夫です。

③ ①と②を30:2で繰り返す

初回の波形チェックの2分後に次の心電図モニターの波形チェックの時間が来るまで、①胸骨圧迫と②人工呼吸を30:2で繰り返します。

Step4. 初回「波形チェック」の2分後

初回の波形チェックから2分間後に、再度波形チェックを行います。
やり方は初回と一緒ですが、アドレナリンの投与の有無が変わります。
まずは前回同様、
①頸動脈に触れながら、心電図モニターの波形をチェックし、ショック適応波形を探します。
ショック適応波形(VFか脈なしVT)なら、再度の電気ショックに加えて、今回はアドレナリン静脈投与も行います。
ショック非適応波形(PEAかAsystole)なら、胸骨圧迫再開のみ再開し、電気ショックをやらないのはもちろん、アドレナリンも投与しません。

そして、
②波形チェックを2分おきに繰り返しつつ、心停止の原因を探っていきます。

①頸動脈に触れながら、心電図モニターの波形をチェック(ショック適応波形を探す)

「波形チェック」という言葉は一般に、心電図モニターの波形をチェックすること……だけではなく、同時に頸動脈を触知することを含みます。
タイムキーパーに「波形チェックの時間です」と言われたら、必ず頸動脈に触れながら心電図モニターを見ましょう。

ショック適応波形→電気ショック&アドレナリン静脈投与

ショック適応波形、つまりVFか脈なしVTなら、再度の電気ショックだけでなく、今回はアドレナリン静脈投与も行います。
アドレナリン投与後は、自己心拍が再開するまで、4分ごとにアドレナリンを再投与していきます。

VFや脈なしVTが続く場合は、人工心肺を回すなど、循環器内科の手助けが必要になります。

ショック非適応波形→胸骨圧迫再開(アドレナリンなし、電気ショックなし)

ショック非適応波形、つまりPEAかAsystoleなら、電気ショックは行わず、すぐさま胸骨圧迫再開を再開します。
アドレナリンは2分前にすでに投与しているので、今回は投与しません。

②波形チェックを2分おきに繰り返す

波形チェック(頸動脈の触知をお忘れなく!)は2分おきに繰り返しつつ、心停止の原因を探っていきます。
ショック適応波形が現れたら、電気ショックをします。
体動が見られたり、自己心拍が再開していたら、そこで胸骨圧迫は中止です。

Step5. 初回「アドレナリン投与」の4分後

初回のアドレナリンを投与したときから、4分後にタイマーがなったら、自己心拍が再開していなければ、再度アドレナリンを静脈投与します。

初回のアドレナリンを投与したときから、4分おきにアドレナリンを投与

初回のアドレナリンを投与したときから、4分おきにタイマーがセットされているはずです。
その時間ごとに、自己心拍が再開するか、人工心肺を回す、あるいはお看取りの方針となるまで、アドレナリン投与を続けるかどうかを検討します。

Step6. その後(心肺蘇生中)

その後は、ベースの作業(胸骨圧迫と人工呼吸、2分ごとの波形チェックと4分事のアドレナリン投与)は繰り返しになります。
もちろん、専門医ならもっと色々とやれることはあるのですが、この記事は超初心者向けですので、深入りしないでおきましょう。

心肺蘇生中にやるべきことは、

① 自己心拍が再開するまで、胸骨圧迫と人工呼吸を続ける
② 2分おきの波形チェックと4分おきのアドレナリン投与を繰り返す。
③ ①をやりつつ心停止の原因を探し、介入する。
④ 本人や家族の急変時対応の希望を確認する。

となります。

① 自己心拍が再開するまで、胸骨圧迫と人工呼吸を続ける

何はともあれ、これだけは休んではいけません。

② 2分おきの波形チェックと4分おきのアドレナリン投与を繰り返す

波形チェックは初回の波形チェック(≒救急外来到着時)から2分おき、アドレナリン投与は初回の投与から4分おき、です。

難治性のショック適応波形では、抗不整脈薬(アミオダロン、リドカイン)静脈投与を検討しますが、この記事は超初心者向けなので、深入りしません。上籍医に考えてもらいましょう。

③ 心停止の原因を探し、介入する

ベッドサイドでできる限りで心停止の原因を検索し、介入可能なものがあれば介入します。
ここまでくるとアドバンスドな内容なので、初心者が一人でやる必要はありません。
内因性の心停止で特に救命の可能性があり得るのは、心筋梗塞や不整脈、クモ膜下出血、低体温あたりでしょう。
外傷なら緊張性気胸や心タンポナーデなどです。)

VFや脈なしVTが続く場合、治療可能な心筋梗塞や不整脈の可能性があり、抗不整脈薬を使うほか、経皮的心肺補助装置(PCPS)を回しながら心臓カテーテル治療を行ったりするので、循環器内科医の助力が必要になります。

クモ膜下出血の場合は、バイスタンダーがあれば自己心拍は結構再開します。
血行動態が安定したらCT評価を行います。

低体温はそれが主病態(例:酔っ払って冬の公園で寝ていた)か合併症(例:冬の屋外で脳卒中により倒れた)かはともかくとして、患者さんが低体温なのかは体幹部に触れれば分かりますね。
電気毛布や加温した輸液で加温が追いつかない場合は、PCPSで復温する方法もあります。

④ 本人や家族の急変時対応の希望を確認する

実際は心肺蘇生の質と同等なくらいこれは非常に重要で、医師が2人以上いる場合、患者の処置を行わない方は診察開始時点から、患者の急変時対応の希望に関する情報を集めに尽力します
患者家族に話を聞いたり、通院歴のある人ならカルテを確認したり、かかりつけの病院に電話連絡したりして、なんとか患者のDNARの希望の有無などを確認します
患者さんとご家族の急変時対応の希望によって、心肺蘇生を中止することは珍しくありません。
(ただし、交通事故など相手がいたり、原疾患やADLの衰えによらない偶発的な心肺停止の場合は、かなり慎重な判断が必要になります。)

Step7. 心拍再開後

自己心拍が再開したら、まずは
①重症患者として診療を行い、
②治療可能な原疾患を探します。

①重症患者として診療を行う

重症患者の診療のしかたは、こちらにまとめています。

②治療可能な原疾患を探す

先述の通り、内因性の心停止で特に救命の可能性があり得るのは、心筋梗塞や不整脈、クモ膜下出血、低体温などですが、  その他の疾患も含め、バイタルサインが安定化させられたら、CTなどの精査を行います。

まとめ

以上、心肺蘇生の超・超初歩の部分だけを、救急外来搬入から最初の5分を中心に解説しました。
大事なところは繰り返し説明したので、少しでも頭に残っていれば幸いです。
最後にいちばん大事なところだけ、もう一度まとめておきましょう。

<心肺蘇生の最重要ポイント>
① 胸骨圧迫はとにかく絶え間なく続ける(中断していいのはベッド移乗と波形チェックの一瞬のみ!)
② 最も重要な蘇生処置は電気ショック、次点でアドレナリン静脈投与(適応を見逃さず速やかに行う!)
③ 波形チェックで、電気ショックの適応ならすぐに電気ショック! 不適応ならアドレナリン!
④ 波形チェックは初回確認から2分おき、アドレナリン投与は初回投与から4分おき
⑤ 患者や家族の急変時対応の希望を確認する

最重要ポイントが理解できたら、実践しつつその骨子に細部を肉付けしていきましょう。
とはいえいきなり現場での実践はハードルが高いもの。

さらに成書できちんと学びたい方には、「日本救急医学会ICLSコースガイドブック」が、日本語で書かれたものの中では一番簡単でわかりやすいと思います。
また、最近はYoutubeでたくさんの心肺蘇生に関する動画がでているので、それで流れを掴むのも良いでしょう。

そして本や動画でイメトレしていても、実際にやるとなると混乱するものなので、次にシミュレーション教育を受けるのがオススメです。
院内の有志がボランティアで開催していることの多いICLSコースを受けるか、ちょっとお高くなりますが、日本ACLS協会のACLSプロバイダーコースを受講するのが王道です。

参考文献

  1. Hewett Brumberg EK, et al. American Heart Association and American Red Cross. 2024 American Heart Association and American Red Cross Guidelines for First Aid. Circulation. 2024 Dec 10;150(24):e519-e579.
    (AHAのガイドライン。こちらからも読めます→ https://cpr.heart.org/en/resuscitation-science/2024-first-aid-guidelines
  2. American Heart Association, 2020 American Heart Association Guidelines for CPR and ECC, https://cpr.heart.org/en/resuscitation-science/cpr-and-ecc-guidelines
  3. 2020 アメリカ心臓協会, 「CPR およびおよび ECC のガイドラインガイドライン ハイライト」, 2020, https://cpr.heart.org/-/media/cpr-files/cpr-guidelines-files/highlights/hghlghts_2020eccguidelines_japanese.pdf
    (AHAのガイドラインの日本語版)
  4. 日本救急医学会ICLSコース企画運営委員会ICLSコース教材開発ワーキンググループ編, 「改訂第5版 日本救急医学会ICLSコースガイドブック」, 羊土社, 2022
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